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暮らしの中、溶け込む神事

 神事の後には、皆で飲食を楽しむ「直会(なおらい)」が開かれます。一年の区切りには、世話役の班が交代する「とわたし(戸渡し、当渡し)」の儀式がそれに加わります。中には、余興で商取引のまねごとをする地区も。
 人々が楽しむその様子からは、都会ではもう見かけなくなった、昔ながらの人の温もりが伝わってきます。今でも神事が、地域の人同士をつなげる大切な社会的機能を果たしているのです。
 
 同様に、お寺でも、例えば、石垣山観音寺の「龍王様祭り」や、怒田地区・阿弥陀寺の「流勧請(ながれかんじょう)灯籠流し」、常行寺の「報恩講」お華足つくりなどは、地元の人がお世話をしています。

 田主丸町は、久留米市でも神事や伝統行事が特に多く残る地域です。しかも、自治会内の「隣組、門(かど)」と呼ばれる班の家々が総出で、一年に複数回ある神事や行事をお世話するのですから、日常の暮らしと切っても切り離せません。自治会の公民館のほとんどが神社の境内にあるのも、神社と地域の結びつきをよく表しています。

「夜渡(よど)」の夏祭りや獅子舞、3年毎に行われる勇壮な「虫追い祭り」など、各種の伝統行事も、まず最初に神社のご神事でお祓いし、あるいは、境内で祭りをするのが普通です。校庭や公園、商店街で祭を開催する都会とは全く異なります。江戸時代以前の地方の歴史伝統が、今も田主丸には息づいているのです。

 神事は、時間と手間をかけて準備されます。注連縄(しめなわ)の材料となる稲藁も、専用の品種の稲を自分達で育てるところから始めます。それを秋に刈り取り乾燥させてから、自分達でしめ縄を作るのです。茅の輪くぐりのご神事では、川の土手から茅(かや)を刈って茅の輪を作ります。そして、皆で境内や参道の草取りをし、神社幟(のぼり)を立て、社殿に幕を張ってから、神事に参列するのです。

 神事では、五穀豊穣や風水害除け・火難除けを祈り、また、農作物の収穫を感謝すれば、地元の皆で七五三や入学を祝います。こうして、田主丸では、ご神事の無い月はありません。その多さは、季節や天候と付き合う農業が今でも盛んであることと関係しているのかもしれません。