日本伝統のSDGs
田主丸では、神社に飾る注連縄(しめなわ)を自分達で作る地区が今も多くあります。しかも、材料の稲藁を用意するため、稲作から始めるのです。
稲藁は、その他にも使います。例えば、1月に行われる諏訪地区の「もぐら打ち」で、子ども達が地面を叩くツト。4月に石王地区の川岸に立てられるワラット。3年ごとの11月、田主丸だけでしか見られない「虫追い祭り」に登場する武者人形や巨大な馬も稲藁で作られます。
笹や竹も欠かせません。笹は、鳥居の前に立つ標柱(しめばしら)に架け渡され、鳥居の形に組まれます。また、「もぐら打ち」のツトの心棒に使ったりもします。
一方、竹は、6月末から7月初めに行われる「風鎮祭」では厄除け柱として地区境に立てられたり、「虫追い祭り」では、武者人形の心棒や手足を操る棒となります。
そして、これらは、町内の川岸や竹林から、その度、調達してくるのです。
6、7月の茅の輪(ちのわ)くぐり神事、その茅の輪を作る茅(かや)は、田主丸を流れる筑後川や巨瀬川の土手から取ってきます。11月30日の晩、あちこちの神社の境内で焚かれる「堂籠り」の迎え火は、近くの山の間伐材や剪定した枝など、大量の木材が使われます。
このように見ていくと、改めて田主丸の神事・伝統行事が「自然」と「農業」で支えられている事実に気づかされます。いずれの要素が欠けても、もはや神事・伝統行事は存在できなくなります。
さらにもう一つ、その存在を左右する要素があります。それは、神事に対する認識、人々のつながりの濃淡、継承できる次世代の有無といった、地域が直面する「社会状況」です。
その意味で、神事・伝統行事の存在は、地域社会の持続可能性を総合的に示す指標、まさに「SDGsのバロメーター」なのです。