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夜渡 ~ 懐かしき夏祭りの痕跡

 7月下旬から9月中旬にかけて田主丸の多くの神社で行われる「夜渡(よど)」。ご神事では、暑い夏に負けぬ健康と農作物の豊穣を祈願します。昔は夜の祭りも盛んでしたが、今ではご神事だけする地区がほとんどです。しかし、さまざまな地域を巡ると、往時の賑やかな夜渡が想像できます。
 

 
 夜渡の日には、境内や社殿に提灯や大きな行灯を飾り、参道にも小さな行灯を並べます。これは夜の祭りをしていた名残りと思われ、今も宵になると火を灯す所があります。
 神前には「がめの葉」で包んだ「夜渡まんじゅう」が供えられます。昔は、子どもが山に入って取ってきた葉で母がまんじゅうを沢山拵えて、親類や知人に配りました。
 ご神事に併せて茅の輪(ちのわ)くぐりをする神社もあります。心身を清めて厄災を祓い無病息災を祈願します。
 

 
 夜の祭りは50年ほど前までは盛んに行われ、地元の若者達が差配しました。演歌歌手や義太夫、講談師が舞台に立ち、境内で映画が上映されるなど、かなり大がかりだったそうです。当時を知る高齢者の方からは、必ず「楽しみだった」という言葉が聞かれます。
 数少ないですが夜祭りは今もあります。やはり若者が開催し、ラムネ早飲み競争、ビンゴ大会、踊りの披露などに歓声が上り、飲食や金魚すくいなどの出店が並びます。子供の奉納相撲や、子供も大人も混じって運動会をする所もあります。
 

 
 このように夜渡は今でも、地域が楽しくひとつにつながる大切な日です。昔から地元社会を維持する役割を果たしてきたのです。既に提灯飾りや夜祭りの多くは消え去り、わずかに残る地区でもその存続に苦労しています。しかし、その楽しさと役割を知ると、地域の活性化のきっかけとして改めて夜渡に注目すべきかもしれません。